2011年11月25日金曜日

続・腰痛手術は日本社会が選んだ?

以前の記事、腰痛手術は日本社会が選んだ?で、
社会の中で腰痛手術が求められた、と述べました。

前回の話で触れなかった重要なポイントの補足です。

腰痛の手術が、腰痛患者の社会に対する免罪符として求められた
理由として、もう一つの重要な事、それは、

「腰痛は目に見えない」

ということです。

「痛み」は自覚症状です。何かが刺さってるとか、骨が折れている場合は、
他人から見ても異常がわかりますが、ほとんどの腰痛は見た目ではわからない。

つまり、「痛い」ことをいくら主張しても、第三者に対する証明はできません。

そういうとき周りの人間はどう見るのか。

「怠けているのではないか」
「嘘をついて楽しようとしているのではないか」

といった疑いを持つ人もいる。

腰痛は環境やストレスによっても増減しますので、
症状に波があったり、みんなで遊びに行ったときには痛くなかったりする。
その様子を見た周囲はさらに疑念を深めて、

「遊びの時はなぜか元気だ、おかしい」

となれば、周りからの風当たりが明らかに変わってくる。

そうなると、「嘘なんかついていない」、と原因を究明しようとする。
検査をして「ヘルニア」があれば一安心。
「ヘルニアだと診断された、私の腰痛はヘルニアだ」と大っぴらに言える


「ヘルニア」という病名、そしてその手術が、
「自分が本当に腰痛であることの証明書」という役割を担っていたわけです。


ところが「異常ナシ」と診断される人もいる。
何も異常がなくて病名がつかないなんて社会的に困る。
だいたい痛みがあるのに「異常ナシ」は納得できない、そう考えるのはまあ当然です。

「そんなわけはない、何かあるはず、異常を見つけられないこの先生はヤブ医者かも」

お医者さんも見くびられては困るので、とにかく異常を見つけようとする。
じゃあCTもやろう、あの検査も、この検査も、と色々調べることになる。

その結果として、脊椎(背骨)の異常が発見されるケースが増えてきたのではないのでしょうか。
ヘルニア以外にも、脊椎の異常とされる病気はたくさんあります。
「脊柱管狭窄症」「脊椎分離症」「脊椎すべり症」…etcetc。

その中で、「はっきりと痛みとの関連性が実証された」とする病気を
今のところ私は知りません。(関連しているケースが無い訳ではありません)
ただ腰の痛い人を検査すると見つかることがある、というだけです。
ヘルニアのように痛みのない人を調べても見つかるかもしれません。

今回のヘルニアの件からもわかるように、
画像診断でいくら神経を圧迫しているように見えても、
痛みと全く関係していないことがあるのですから、
全ての画像診断は痛みとの関連性においては再評価する必要があるはずです。

そういう研究は、腰痛に関しては多くの検査が
不要になるという結果をもたらすかもしれません。
そうなれば医療費だって軽減できる。

検査機器を導入している病院は損害を被るかもしれませんが、
「検査」は病院の商業的な利益の為にあるのではないはずです。

それに、患者が求めているから、医師として異常を見つけなくてはならないから、
「病名がつくような異常を探す」
というのはあまりにも本末転倒しています。

こういう構造をおかしいと思う先生には、是非
「全ての脊椎の異常」と「痛み」の関連性について調査を始めてもらいたいのです。
そして、なるべく早く事実を周知してくれることを望みます。

十数年後に、また「ためしてガッテン」で

「脊椎の異常に関する大誤解」、とか本当に勘弁して頂きたい。

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